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on the mat, off the mat


「on the mat, off the mat」 という言葉がある。

「マットの上で起こることは、マットの外でも起こる」という意味。

最初に聞いた時はとりたてて何とも思わなかったこの言葉・・・

ヨガを続けるうちに本当に深い言葉だなぁと感じるようになった。

この言葉はヨガを例にその人の「在り方」や物事に対する「向き合い方」に焦点を当てているけれ、おそらく何にでも当てはまる言葉だと思う。

結局人はそんなに自分を使い分けることが得意ではないような気がする。

仕事をしていても、家事をしていても、趣味の時間でも、「その人となり」はなんとなく滲み出てくるようなものなのではないのだろうか。

「マットの上で自分ひとりポーズをとる」というとてもシンプルなヨガだからこそ、、「その人となり」が実感としてとても意味が分かりやすいのだろう (つまり、マットの上で何が起こっても言い訳できない・・・!すべて自分の責任)

私が「on the mat, off the mat」を聞いていつも思い浮かべるのは、「サーランバ・シールシャ・アーサナ」。

サンスクリット語ではサーランバ (サポートされた)・シールシャ (頭)・アーサナ (ポーズ)、英語ではヘッドスタンド、日本語では

頭立ちのポーズと言い、その名の通り身体を逆さまにして、頭と腕、もしくは手のひらで支えて立ち、保つポーズ。

「アーサナの王様」とも呼ばれるこのポーズは、効果が素晴らしく、見た目もヨガらしいこともあり、とても人気がある。

初めてヨガクラスでこのアーサナがターゲットになった時、私は「やってみたい」という気持ちを一瞬で押さえつけるほどに、

「怖い。嫌。私には無理だからやらなくていい」と思った。

当時はヨガを始めたばかりで筋肉が十分ついていなかったこともあるけれど、何より精神面の抵抗、恐怖心が大きかった。

ただヨガを続けていると否応なしに取り組まなければならない場面が出てくるし、インストラクターとして生徒さんに教える立場であればまず自分ができなくてはならないのは必須。

恥ずかしながら、最初は挑戦することに逃げてばかりいた私。

それでも、何度も何度も練習をしているとさすがに少しずつ出来るようになってくる。

最初は壁を使ったり、誰かにサポートしてもらいながら始め、その後、少しずつ壁から離れていって・・・

そして、ある時ふとバランスが取れていることに気が付く。

実はなんとなくできそうになってから、壁がない場所で一人きりでポーズをとれるようになるまでがとても長かった。

家であればリラックスしてできるのに、クラスで誰かが見ていると思うと、失敗するのが恥ずかしくてできないこともあった。

一人でできると言えるまでには、結局、初めてサーランバ・シールシャ・アーサナに出逢ってから、足かけ5年ほど経っていた。

始めは到底できないと思っていたポーズが形になってきたと達成感や嬉しさもあるけれど、きっと一番良かったのはこのアーサナが出来たという結果ではなく、このポーズを練習するプロセスの中で気付いたことだろう。

それは、「失敗しても失うものは何もない、ただ経験が残るだけ」というシンプルすぎるほどシンプルな事実。

極端な例だけれど、何かを持って産まれてくる人はいないのだから、本来人は何も持っていない。

その生きているという事実自体に、大きな価値がある。

だから、「たとえできなくても、課題はあるけれど、私の価値は変わらない。」

逆に挑戦しなければ、一生できることはないのだ。 

そして、サーランバ・シールシャ・アーサナに対して怖がってばかりで安全圏を飛び出せなかった自分・人からどう見られるか、他人の目ばかりを気にしている自分は、実生活(off the mat)でもどこか依存体質で、いつでも誰かに守って欲しいと願っていた

自分そのものだと気が付いた。

ヨガはマットの上でも、マットの外でも、挑戦することの大切さを教えてくれた。

とは言え、まだ完璧にはできない。

今日の午後も友人の奈月ちゃんのヨガクラス (http://www.yogarainbow.com/) に参加してアライメント = アーサナをとる際の骨や筋肉の位置、を客観的にチェックしてもらった。

アドバイスを聞いて、自分なりに考えて、想像して、試してみる。

少し靄がかかっていた部分が晴れてくる。

その繰り返し。

私はシールシャ・アーサナ倒れても、転んでも、失敗してもいいんだということを体感した。

どこかで聞いたことのある言葉でも、ただ頭で知っているのと体感して知るのでは自分の行動に与える影響が大きく違った。

そして、もっと驚いたのは倒れても、転んでも、

その後見上げた空は、いつもよりも一層青く、澄んでいて、晴れやかだということ。

だから、安心して挑戦してみよう。

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